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あをによし 奈良の都は

  若草山の山頂からは奈良、京都の市街地が一望できた。白っぽくみえる空き地のようなところは平城京の跡だと N さんは言った。たたなづく山々が幾重にもつらなって濃淡のグラデーションをみせている。

 あをによし 奈良の都は咲く花の にほふがごとく 今さかりなり

 この歌は高校の時に習った歌だが、いにしえの人々もこうして山に登り、眺望を楽しんだのだろうか。大きなイチョウの木やカエデなどが紅葉して美しい景観だ。夜景も素晴らしいらしく、大勢の人が訪れるという。

 ちなみに五島の山は全然、紅葉しない。ところどころにハゼかなにかが紅くなっているのは見るが、一徹にミドリなのだ。

 あちこちの店やら案内所やらのぞいているうちに、私の手許にはたくさんのパンフレットが集まっていた。

     竹久夢二と大正浪漫の世界 (京セラ美術館)

     上村松園・上村松篁・淳之展「受け継がれる眼」  (松伯美術館)

     安野光雅 御所の花  (奈良県立万葉文化館)

     正倉院展  (奈良国立博物館) 

     

 あちらでもこちらでも、いろいろな催しや、展覧会がひらかれているのだった。奈良や京都に住んでる人はいいなー、うらやましい。それにひきかえ五島といったら。

 「奈良に住んでいてシアワセねー」と私は N さんに言った。「うーん、でも奈良には海がないからー」と N さんはやさしく慰めてくれるのだった、、、。

 うれしいことにN さんは、近々(いつになるかわからないが)友達をさそって五島に遊びに来てくれるという。何もないところだけれど、海だけは四方八方にあるので、海のアオと空のアオ、そして山のミドリを楽しんでいただきたいものだ。

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ならまち散歩 若草山

 私はこのあいだ、11月10日のことだが、大阪駅のホームでJR奈良駅行きの電車が来るのを待っていた。朝の8時頃から20分間ほど、ホームに立っていたのだが、どこから人が湧いてくるのか、と思うほどにワサワサとホームは人であふれ、けれどじきに電車のドアに吸い込まれ、誰もいなくなったかと思うとまた人であふれ、の繰り返しを見ていると、この人たちがもっと地方に分散してくれればいいのに、などと思うのだった。

 さてその日は、友人のN さんが奈良を案内してくれることになっていた。「どこへ行きたいの?」と訊かれても、私はどこといって特に行きたいところがあるのではなかった。N さんとどこかぶらぶらするだけでいいのだった。だったら“ならまち”へ行きましょうということになった。

 ならまち、というのは私は初めてだ。京都 奈良の神社仏閣は中学校の修学旅行いらい幾つかは行ったことはあるが、ならまちははじめて。元興寺の近くの駐車場に車を停めていよいよ歩くことになった。

 しばらく歩いていると、奈良市杉岡華邨書道美術館というのがあった。杉岡華邨という人は、かなの書においては第一人者といわれており、文化功労者にして文化勲章をもらった人なのだ。どうして知っているかというと、この人が再婚した女の人(杉岡和子さん)が書いた『一旦辞するにあたり』という本を1年前くらいに読んだことがあったのだ。さっそく入館して見学することにする。 会津八一をテーマに入江泰吉の写真と華邨のかな書の合同展なのだが、書も写真も息をのむような美しさだった。

 またしばらく歩いて、「ならまちからくりおもちゃ館」へ行った。江戸時代の人々の手作りの品々の意匠には感動する。知恵の輪に挑戦したが歯がたたなかった。スタッフの人からやってもらうと、なぁーんだというものだけれど。

 そのおもちゃ館はもとは、あるお金持ちの別邸だったというが、茶人だった持ち主の趣味で二畳ほどの小さな茶室があった。欄間を見ると、茶の湯の湯呑み、茶筅、なつめ、炭かごなどが彫りこまれ、なんとまぁイキでハイカラで高尚なことかと感嘆する。奈良は千利休より百年も前から茶の湯が楽しまれていた、ときいて驚く。

 実は私は9日に五島を発ったのだが、その前日の8日土曜日に『人生の楽園』という番組を見た。その主人公は、若いころから茶道に魅せられ、先生の資格も取り、定年後に抹茶とお菓子を提供する店を開いたのだった。それを見て私は、「これからまたお茶の稽古を始めよう」、とまでは思わないが、時どき、ささっとお薄を点てて愉しむのもいいなー、と思ったのだった。茶道具はもう何十年もお蔵入りになっているのだ。

 その抹茶の店はこのならまちの界隈にあるのだと気がついて探してみたのだが、店の名前も覚えていないし、路地は入りくんでいるしで、あきらめざるをえなかった。あとで“ならまちお散歩ガイドマップ”を広げてみたら、ちゃんと載っていたのだけれど、なぜかその時は頭がまわらなかったのだ。

 家に帰って、もう一度『人生の楽園』のビデオを見た。店の名前は“喫茶去庵”(きっさこあん)というのだった。ダンディーなご主人と、しっかり者の奥様が店を切り盛りしているのだ。いつかまた、ならまちに行くことがあったら、ぜひ行ってみたいものだ。

 そのあとN さんは若草山へのドライブに連れていってくれた。 この項続きます、、、。

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