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どろぼうの思い出

 先日我が家では、タダで引き取ってくれるというので、使えなくなったエアコンやらパソコン、鉄製品などを回収してもらったのだが、そのとき、ずーっと物置の片隅に置いてある銅板も持って行ってもらおうということになった。で、私はそこへ急いで取りに行ったのだが、なんと20数年も置きっぱなしだった銅板が忽然と消えてなくなっていたのだった。

 いったい誰が移動させたのだろう。けれどどう考えても家には銅板に用事がある人間などいないのだ。ということは夜闇にまぎれて、もしくは白昼堂々と誰かが持ち去ったということなのだろうか。見知らぬ誰かが家の周りを巡回しているのだろうか。ちょっと気持ち悪いな~。

 そんなことどもを考えているうちに、私は大昔の若い日の、ある出来事を思い出していた。まだ学生だった頃、私は駅の近くの小さなアパートに住んでいた。階下には大家さんがいて、二階に4室あり、部屋の窓から下を見るとレンコン畑が広がっているようなアパートだった。ある日の昼下がり、私は自室で本を読んでいた。すると、すっとドアが開き、(もちろん鍵をかけていたのだが、それは内側からボチッと押すだけの簡単な鍵だった)ハッと見ると2人の男が立っていたのだ。そして一人が言った。「あ、スズキさんじゃないですね」 で私は「いいえ、違います」と言った。二人は失礼しました、と言って立ち去った。

 私はしばらく呆然として、今のはなんだったのだろうと考えた。そしてやっとのことで「あーっ、どろぼうだー」と気付いたのだった。いやな気分になった私は気分転換しようと、昼ひなか銭湯に行くことにした。ついでに下の大家さんにカクガクシカジカのことがありました、と告げたあと出かけたのだった。

 銭湯から帰ってくると三台ものパトカーが来ていた。それからというもの「私は、、、」で始まる調書とやらを取られることになった。なんとそれは3時間以上もかかったのだった。「それはもうさっき言ったでしょ!」と叫びたくなるくらい何度も同じことを訊かれたのだ。ヤレヤレ。

 あとでわかったことだが、アパートの住人のなかで、日中は勤めに出ている女の人のところで、タンスの引き出しの中の2万円がなくなっていたそうだ。そのとき在宅していたのは私一人だったらしいのだが、驚くべきことに私は何一つ物音らしきものを聞いていないのだった。ドアやタンスを開け閉めする音、話し声はもちろんのこと、アパートの外側の鉄製の階段はどんな人が昇降してもいつだってギコギコいっていたというのに、まるでそんな音は聞かなかった。彼らが「失礼しました」と言って降りていくときも、まったく音を立てなかったのだ。

 さてその後、居心地が悪いと感じた私は駅の向こう側に引っ越すことにした。そこにはちゃんとした管理人のおばさんがいた。有難いような有難くないようなおばさんだったが、あとで有難いおばさんだったことがはっきりわかる事件が起きたのだ。

 そこは女の子ばかりが住むアパートみたいな長屋みたいなものだったのだが、共同の炊事場があった。ある日のこと、それは土曜日だったが、ちょっとお茶を飲みたいと私はヤカンでお湯をわかしていた。お湯がわくまでのあいだに部屋に戻った私は「きょうは土曜日だから泊まりに行こうかなっ」という気になり横浜の姉のところへそのまま出かけてしまったのだった、ヤカンはそのままで、、、。

 そして翌日の日曜日の夕方、横浜から帰ってきたのだが、そろそろ降りる駅が近づいたころになって、私は火にかけたヤカンのことを思い出したのだった。私はホームから背伸びをして、あたりが焼け野原になっていないかどうか見渡した。家々はいつものように立っていて、あぁよかった、どうやら火事にはならなかったようだと胸をなでおろしたものだ。管理人さんからは大いに叱られたけれど、ありがたくお小言をちょうだいした。

 女の子ばかりが住んでいるというのに、そのうちの一人がアメリカ人の男の子と同棲を始めたりして、蜂の巣をつつくような騒ぎにになったことなど、もう何十年も昔のことどもが次々と浮かんできたのでございましたよ^^

追記 それから二カ月ほどたって、アメリカ人のジョーくんは出ていくことになった。そのころには私たちは ハ~イ ジョー♪とあいさつするほどに仲良くなっていたのだった。去る日の前の晩、ジョーは共同炊事場で一所懸命にハンバーガーを作り私たちも手伝った。ハンバーガーでお別れ会をしたのだった。 

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コメント

アァ  なんたることよ。胸がつかえて緊張の連続最後まで読んだけど,どきどきで、もう知らん  でも若き日の苦き思い出ですんで良かった。火は、小まめに、消しましょうね。  イロハ

投稿: | 2011年6月 5日 (日) 17時35分

イロハさま

はい、火はこまめに消しましょうね!

私もそろそろ前期高齢者なので、火の始末は
肝に銘じなければいけませんよねー。

今でもレンコン畑の匂いが忘れられないのですよ^^

投稿: なぎさ | 2011年6月 6日 (月) 12時25分

ブフフ
ドロボーさんに出くわした後に風呂を思いつくなぎささんに爆笑です!
でもドロボーさんも火事も、大事に至らなくて良かったですね。
きっとなぎささんは強運の星のもとに生まれたんだと思いますよ!

投稿: 便利屋 | 2011年6月 9日 (木) 18時49分

便利屋さま

銭湯に行くことにしたのは、きっとアタマが
かゆかったからかな?

強運の星ねぇ~、、、。
もしそうだったら、今頃ひだりうちわで暮らしていられるはずですけどねー。毎日あくせく働いて、じっと手をみておりますよ^^

投稿: なぎさ | 2011年6月 9日 (木) 21時21分

なぎささん
こちらはいつも土曜日に更新してますよ~
よろしくお願いしま~す♪(^^)

投稿: 便利屋 | 2011年6月18日 (土) 18時34分

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