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京都 嵯峨野の祇王寺へ

Image  瀬戸内寂聴さんは五島にも講演にきたことがあり、私も聴きにいったのだが、どんな話だったかはまったく覚えていない。記憶に残っているのは「私は人寄せパンダです」と言われたのがおかしくてちょっと笑ったことぐらいだろうか。

 友達に寂聴さんの大ファンがいる。私は彼女の持っている寂聴さんの講演のCD12巻を借り受け、炊事をしながらぼちぼち聴いた。

 その中で寂聴さんは、40年ほど前に書いた『女徳』という小説にふれていた。それが今頃になって外国でも読まれるようになり、寂聴さんはイタリアまで講演に行ってきた、というのだ。

 私も30年ほどまえ、この小説を読んだことがあるが、全編これラブ・アフェア、手かえ品かえ色事の連続といった調子で、読むほどにうんざりしてきて「もう返さなくていいです」と言って誰かにやってしまったことがあるのだ。

 『女徳』の女主人公がどんな人かというと、仮に千代さんとでもいおうか、奈良の貧農の娘だったのだが、器量よしであったことと、頭がよさそうなことから、大阪の置屋へ売られてしまったのだった。

 花街の流儀に従って気に染まぬことどもをこなすうち、15歳のとき、ある男への腹いせのために小指を三味線の糸できりりと巻き上げ、自分でその指を落としたのだった。その落とした指をハンカチで包み、雪の降るなかを走ってくだんの男のもとへ行き「これ、あげまひょ」と言って差し出したのだった。

 その事件のあと、15やそこらで、そういうことをするとは空恐ろしい女だ、とそれまで売れっ子だったのが、たちまちお呼びがかからなくなってしまった。それではと東京へ行ったら「面白い女だ、いっぺん見てみたい」と引っ張りだこの人気者になったそうで、その美貌によりブロマイドなどももてはやされ大活躍だったそうだ。

 その後、結婚したり離婚したり、お妾さんになったり、ある男についてアメリカへ渡ったり。また別の男とフランスへ行き、かの地では堕胎が許されないので生まれた子供を孤児院に置いて、自分一人で身軽になって帰ってきたり。また大阪へ舞い戻ってバーのマダムになったりとさまざまな遍歴をしたのだった。

 そのうちだんだんと、千代さんはそういう生活に倦みつかれるようになった。もともと大変な読書家で、寝るときには枕元に本を積み上げて寝るような人であったのだ。また俳句を詠み、虚子に認められた優等生だったのだ。小指を落とした女の俳句はなにかしらご利益があるとして、千代さんが短冊にさらさらと俳句をものすれば、高価で売れたのだと言う。

 39歳のとき千代さんは「この黒髪があるから女としての苦労が絶えないのよね」とて髪を下ろし智照尼と名乗り、祇王寺へ入ったのだった。

  墨染めの わが初すがた 萩のまえ  (智照尼)

 10月27日のこと、私は娘と孫と三人で、京都駅より山陰線に乗り、嵯峨嵐山下車、タクシーで五分の祇王寺へ行ってきた。まだまだ紅葉の気配はなく、もみじはまだあおあおとしていた。祇王寺は平清盛までさかのぼる由緒ある寺だそうだが、なにぶんにも、、、古い。仏像が祀られている畳の部屋へ上がって拝んでもよろしい、というような書付があったが、畳はざらざらとしているようで気後れがしてその気にはなれなかった。寂聴さんによると、その六畳くらいの仏間に、智照尼さんの亡骸が横たわっていたことになるのだ。智照尼さんはちゃんと辞世の句も用意していた。

   露の身と すずしきことば 身にはしむ  (智照尼)

 そしてこの尼さんの物語は、小説がヒットしたことから、映画に舞台にテレビに舞踊にと、次々に取り上げられ、女優さんたちは競って出演したがった、ということである。傾きかけていた祇王寺もみるみるうちに整えられ、豊かになったということだ。

 そうそう、この尼さんが出家するとすぐに、剃っても剃っても毎日伸びてくる頭の髪を剃ったり、俳句の販売係をやってくれたりする男性が現れ、尼さんはどこまでいっても女徳にあふれた人だったらしいのである。

 

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コメント

寂聴さんご本人も小説の主人公も、とても強い業を感じさせますね。
小心者の私なんかじゃ、とても近づくことは出来ないでしょう(^^;
なので実生活では癒し系の人とばかり付き合ってしまうんですが、
なにかを成し遂げる人ってのは、業の強さが必要なんでしょうね。

投稿: 便利屋 | 2010年11月 7日 (日) 11時28分

便利やさま

そういわれてみれば、そうかもしれません。
寂聴さんもかなり奔放に生きた人ですしね。
烈女って感じでしょうか。

祇王寺の近くに寂聴さんの寂庵があり、ちょっと
のぞいてきました。別に住まいを持っていらっしゃる
ようでしたよ。

投稿: なぎさ | 2010年11月 7日 (日) 21時50分

祇王寺、行ってみたいものです。清水寺や銀閣寺のような所しか行ったことがありません。
ひっそりとした佇まいのお寺なのでしょうね。
憧れます。

投稿: 大阪の女 | 2010年11月12日 (金) 22時48分

大阪のひとへ

修学旅行で行くところは決まってますしね~^^
奈良、京都、素敵な所がいっぱいあっていいですね。

大阪は、、、娘と難波花月にお笑いを聴きにいきました。平日だというのにお客さんはいっぱいでしたよー。

投稿: なぎさ | 2010年11月14日 (日) 21時17分

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