« お気の毒なクレオパトラ | トップページ | ココハ オカーサンノ オウチ »

そは長き戦いにして

Pict0108 (つづきまして)さて、クレオパトラは術策権謀の人と呼ばれることもあるそうで聞こえは悪いが、それはいたしかたないことのように思われる。というのは弱小国が沈没せずにすむためには、どんな悪知恵も働かせないことには一国の運命はたちいかないのであった。

 宮尾登美子著『クレオパトラ上・下』を読むと、残念ながらクレオパトラがバラの花びらを浮かべて入浴するシーンはなかったが、演出効果を狙ってバラの花びらを使う場面が二ヶ所あった。

 シーザーがローマへ戻りしばらくして、クレオパトラとその子(シーザーの子でもあるのだが)をローマへ招待したことがあった。瀟洒な別荘を与えられ国賓級の扱いではあるけれど、シーザーにはれっきとした正妻が控えているのだから、立場は微妙なものであった。そんな中、シーザーはどうしても出征せねばならなくなった。

 出陣の前、晩餐に訪れたシーザーをもてなすためにクレオパトラがしたことは、豪華な食卓を用意することはもちろんのこと、わざわざエジプトより大量のバラを取り寄せ、二人の使うベッドを厚さ10センチに盛り上げて、バラの花びらでおおったのだった。そのふくいくたる香りが部屋中に満ちみちていたという。そこへクレオパトラは、まとった薄絹をさらりと脱ぎ捨て身を横たえる。その後舞い上がり舞い落ちたおびただしい花びらは、いずれ召使たちの手によりかき集められ、、、、、のちには立派な堆肥になったことだろう。(こんな事は宮尾さんは書いてませんが)

 その後シーザーは暗殺され、クレオパトラは世闇に紛れて命からがらローマを脱出、エジプトへ戻る。次なるローマの覇者となったアントニーを、武力ではなく女の武器で陥落させるためにクレオパトラがしたことは、自分の女王船をみやびらかに飾り立て、アントニーが足を踏み入れる床を一面、バラの花びらで埋め尽くしたことであった。花びらが靴にまとわりつかないように、目には見えねど薄いネットが張られていたそうである。山海の珍味を堪能したあとは、さぁどうぞこちらへ、、、香をたきしめたベッドルームへといざなうのだった。

 そんなこんなの涙ぐましい努力にもかかわらず、クレオパトラが身を挺して守り抜こうとしたプトレマイオス王朝は崩壊してしまった。思えば快楽は少なく、制約の多い生涯ではあった。初めてシーザーに出会ったときクレオパトラは言った。「ギリシャの哲人の言葉に“おのおのの一生は戦役なり。そは長期にわたる多事多難なる戦役なり”という言葉があります。私はそれを生涯旨とし、女王として戦うことを自分に課してまいりました。」 

 なにやら家康の人生訓を思わせるが、私はこれを書き出し机の前に張ることにした。朝、目が覚めたら「さっ、今日も戦争だ!」と気合を入れて起き上がるのだ。誰かがやさしく前からも後ろからも護ってくれるとは限らないのだから、多事多難な一日を今日も戦争だーい、と思い定めたら、ココロは幾分ラクになるような気がしてきたのだ。

 『クレオパトラ上・下』の巻末をみていたら、参考文献が小さな文字でえんえん4ページにわたって書いてあった。ローマやギリシャ、その周辺の国々の歴史書はもとより、『暗殺の辞典』『毒の話』『占星術』「古代エジプトの性」『ファラオの秘薬』『古代の船と航海』etc、、、。作家がこれだけの膨大な資料をつぶさに読んだとは思わないが、たとえ斜めに読んだにしろ、一冊の本を書くということは、これは大変なことだということがわかる。それにまた現地へ赴き、そこの光や風を味わい遺跡なども観る、ということも必要だろう。ところで私は『クレオパトラ上・下』二冊を読んで、このブログの記事をやっとのことでひとーつ、書きました^^

 

 

|

« お気の毒なクレオパトラ | トップページ | ココハ オカーサンノ オウチ »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

時代が時代なんでしょうね。
クレオパトラも悲劇的な立場に身を置いていたんですね。今の感覚から言うと、術策権謀なんでしょうが・・・

投稿: つばき | 2010年5月20日 (木) 20時32分

つばき様

そうですねー。一般庶民だったら、こんな苦労は
せずにすんだでしょうにね。
兄弟姉妹でも権力争いのため殺し合ったりするのです
から悲劇ですよね(ーー;)

投稿: なぎさ | 2010年5月21日 (金) 21時49分

ブフフ
お疲れ様でした~!
なぎささんはクレオパトラを見習って、毎日闘いの日々を送られてるんですね。
次回はどこでどんな「女の武器」を使ったか教えてくださいね!
楽しみに待ってま~す♪( ^ω^ )

投稿: 便利屋 | 2010年5月23日 (日) 10時58分

こんばんは^^
クレオパトラが寝た後のバラの堆肥、
さぞ高貴な香りがすることでしょう。
それにしても、
女を武器にするにはよっぽど自信がないと、
と思いますが・・・
私だったら、ひとりででも剣を抜きますね。

なぎささん^^
これだけの記事を書けるって凄いことですよ。

世の中には目標もなく、
ただ虚しく生きている人もいます。
気にしないほうがいいですよ^^

お暇だったら、
私のブログに遊びにいらして欲しいわ^^

投稿: さくら | 2010年5月23日 (日) 20時24分

便利やさま

女の武器を使う場面なんてなぁんにもありゃしません
でした。平々凡々たる我が人生、、、。

シーザーから出て来いと言われた時、クレオパトラは
わが身を絨毯に巻かせて、召使いにかつがせて、敵陣を突破。
見つかったら八つ裂きにされるかもしれないというのに!
肝っ玉のすわった女だったのですね~~!イザとなれば
こんな知恵も出てくるものなんでしょうね。

投稿: なぎさ | 2010年5月23日 (日) 22時19分

さくら様

はいはい、ごぶさたしてました。
さっそくに詩人のもとへはせ参じたいと思いますが
これからノンベェたちを迎えに、、、。

でもクレオパトラって魅力的な女性だったと思いますね。
図書館なんかも力を入れていたそうですよ。

投稿: なぎさ | 2010年5月23日 (日) 22時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/76457/34488899

この記事へのトラックバック一覧です: そは長き戦いにして:

« お気の毒なクレオパトラ | トップページ | ココハ オカーサンノ オウチ »