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それは 口が言うだけ

018 久しぶりに会ったK子さんは浮かない顔をしていた。そして言うのだった。年金も貰えるようになったことだし、そろそろ離婚したいのだと。でもねー、離婚したらこのうちがなくなってしまうでしょ、そしたら子供たちが帰ってくるうちがなくなるということだから、それが辛いのよねー、と言った。

さて私は家で夫に「K子さんが離婚したいんだってー」と話した。すると夫は「それは口が言うだけであって、内心は離婚したくないのだから、もっとよく話を聞いてあげれば」と言うのだった。

何日かたって、私はマドレーヌを焼いた。万事につけおおまかおおざっぱの私は、こまごまチマチマと個別に作ったりはしない。いつもドカーンと大きなかたまりで焼くことにしている。その半分を持って、K子さんのうちに行くことにした。

K子さんはやつれてぼんやりした顔で玄関に出て来た。夜中ずっと眠れなくてコタツで悶々としていたのだという。ご主人は今なにをしているのー、と訊いたらば、屋根の修理をしているのだという。

この寒空に屋根の修理をしてくれるなんて、有難いことではないの。よそのおじさんだったら、絶対してくれないところよー。もっと感謝しなくちゃ。そういえば、とK子さんは言った。「もう何十年も、ありがとう なんて言ったことないような気がする」と。

それで私は言った。「ご主人が下へ降りてきたら (とハーフムーン・マドレーヌを差し出し) 寒かったでしょう、これでお茶でも飲みましょう、と熱いコーヒーでも紅茶でも淹れたらどうかしらー」

「言いたくないけど言ってみる」とK子さんは言った。

それから何日かたって、K子さんはバイクに乗って我が家へやってきた。皮が赤紫色の大根を三本持って。この赤い皮をした大根が大好きで、毎年たねを蒔いて育てているのだそうだ。これからおいしいコーヒーを買いにいくのだと言っていた。バイクにまたがるとK子さんは振り返って言った。「このあいだはありがとね、きっかけを作ってくれて」

……ということは。あれはやはり くちが言うだけだった、ということなのねー。赤紫色した大根は皮をむいたら、ふつうの白い大根でした(^_^)v

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えっ?幸せにしてくれるの?

025 去年の九月に発売された“イケメンバンク”という貯金箱がよく売れているそうである。お金を投入すると液晶画面に映るイケメンとのストーリーが展開するという貯金箱である。お金を入れる(あげる)とそのイケメンが「幸せにしてやるからなー」と言ってくれるそうなのだ。

そのうち「なぁなぁ」といっておねだりもしてくるそうで、それでは私も「ねぇねぇ」と言っておねだりをしてみようか。というのは数年前ムスメが結婚するときのこと。何年もかかってコーヒー缶くらいの大きさの缶に五百円玉の貯金をしていたのが、もうこれ以上一枚もはいりません、と満杯になったのを、気前よく「ハイ、なんでも必要なもの買って」と提供したことがあったのだ。その時の恩義を忘れてはいないだろうから、誕生日のプレゼントに買ってもらおうかなー 4935円なりよ^^

そうだ、嫁友達のみんなにもこのイケメンバンクのこと教えてあげよっと。「幸せにしてやるからなー」なんて言われたことなど一度もなさそな顔ぶれだし、この頃ではオヤの介護に翻弄され、不眠と排泄問題でクタクタ ヨレヨレになってる彼女たち。お金をポトンと入れれば「幸せにしてやるからなー」とイケメンがささやいてくれるのだ。一瞬でもこの世の憂さを忘れる事ができるものならお安いもんではなかろうか。

この頃では物だろうが元素だろうがその特徴を生かして擬人化するのが大流行で、そういう商品がヒットしているのだそうだ。単なる物が擬人化されて魅力を増し、大人たちも人恋しさから引きつけられる。なにかといえばイケメンバンクにすっとんで行くようになれば貯金もじゃんじゃん貯まるよね。

そうだ、私のイケメンに素敵な名前をつけたら楽しいだろうな。さてなんと呼ぼうか、「ダーリーン!」「・・・くーん」いやもっとましなのがないかいな、、、。

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エコ廃油石鹸のススメ(2) そと孫はつらいよ

017 このわたくしのような質実剛健な母に育てられたというのに、長女は身に付けるものなど、なにかとこうるさい人である。

身体を洗う石鹸は、イタリアはミラノ製のオリーブ油石鹸でなきゃだめ、と決めていたそうである。ところがあるとき舶来の石鹸が底をつき、梅田に買いにいったところが買い忘れ、ほかには石鹸という名のつくものがないところから、とうとう五島から送っていた廃油石鹸で身体を洗ってみた。

するとなんともまた素晴らしい石鹸だということがわかったのだそうだ。娘が言うには、廃油の中に溶け込んでいるさまざまな動・植物のエキスがよろしいのではないかと言っていた。それにまた風呂場でクタ~ッと溶けていくさまがミラノの石鹸にそっくりなのだそうだ。

娘からそんなふうに言われても私自身は廃油石鹸で身体を洗おうという気にはなれなかった。うちにはきれいな包装紙にくるまれた石鹸がいくらでもあるのである。ところがある日のこと、風呂場に置いている廃油石鹸(これで靴下を洗うつもり)を見ていたらふいに、あの子があんなに言うのだから、と身体を洗い、ついでに髪も洗ってみた。

するとまぁ、次の日になって髪を見たら、、、全然バサバサしてなくて、これだと手ぐしでなでておくだけでOK状態なのがわかった。それで私は夫に言った。「あの石鹸で洗ったら髪の毛増えるかも~」即実行しているようだ。

おかあさまも「私は首から上にはあの石鹸は使いたくない」と言っていたのだが、ある日のこときまぐれで顔を洗ってみたらなかなか良かったらしく「あの石鹸はつっぱらなくていいねぇー」と言っていた。そのとき私はわかったのだが娘がこうるさいのは隔世遺伝だったのねー。

さて私はそれ以来、新聞雑誌などで、石鹸やシャンプーの広告を注意深く見るようになった。ある社では、ある動物の毛に含まれる微量のしなやか成分を取り出し配合しているのだそうである。それは牛か豚か羊かネズミか。

けれどそんなに大変なことをしなくても、と私は思う。我が社の石鹸だったら(以後 我が社の石鹸とよばせていただきます)天ぷらを揚げれば、ありとあらゆる野菜の、カツを揚げればありとあらゆる動物の、養分がたっぷりとはいっているのである。

我が家に娘と孫がいたころ、娘の希望で、孫は頭のてっぺんから足の先まで、我が社の石鹸で洗っていた。孫は一度としてお肌のトラブルなし、おまけにパパ似で色白、玉のような肌の持ち主なのだ。

けれどもこのあいだ、娘のお義母さまがうちにみえて「あのぉー、赤ちゃんの石鹸はどれでしょう」と訊かれたときに、「廃油石鹸を使っております」とは言いかねて、まっとうなベビー石鹸を差し出したのでありました^^

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