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Mさんのしあわせ

 Mさんが病院を辞めて結婚すると言ったとき、私たちは、Mさんは社長夫人におさまるのだね、と思った。Mさんは手持ちの縁談が沢山あったのである。ところが意外にもMさんの嫁ぎ先が、病院のすぐ近くの農家であるとわかった時、私たちは「え?」と顔を見合わせてしまった。

 Mさんはそれまで病院の近くを散歩する時、その農家のご主人と立ち話をしたり、きゅうりや茄子など少々もらったり、癌で奥さんを亡くしているご主人を慰めたり励ましたり、そういうお付き合いがあったということだった。けれどまさか結婚しようとまでは、、、思っていなかったのではないだろうか。

 あの暑い夏の日に悲劇がおきてしばらくして、散歩を再開したMさんは、通りすがりに畑で仕事をしている農家のご主人の所へ行った。そして何も言えずに黙って立っていた。そのご主人もなにも言わずに黙々と仕事をしていた。そんな事が何回もあったのちにMさんは不意に「この人のお嫁さんに貰ってもらおう!」という気になった、ということだった。

 冬のある日、私は友達と連れ立ってMさんの新居を訪ねた。白衣を脱いだMさんは白い割烹着を着て、農家のおかみさんらしくなっていた。ご主人はと見ると、もうどこをケチつけようもなく立派な人だ、ということはすぐにわかった。私はしっかり見ていたのだが、Mさんがコタツに座るとき、必ず、ご主人のすぐそばに寄り添うように座るのだった。コタツは四辺あるのだし、人間は四人いるのだから一辺に一人座ればちょうどいいんじゃないの?とわたしは思ったんですけどね。

 元荒川の流れに沿った道を歩きながらMさんは言った。「うちの人ったらね、とってもやさしいの。近所の人もね、お釈迦様に輪をかけたくらい、立派な人だって言ってるのよ。」  Mさんの実家も農家で、お百姓仕事はちっとも嫌じゃないとMさんは言っていた。

 じつは私は一人で憤慨していたのだった。「アイツメ(←Mさんの元の夫のことである)、 Mさんのこと、ろくろく探しもしないでほかの女と結婚したりして、許さん!! 」 ……とこんなふうに腹を立てていたのだけれど、Mさんのとろけるような笑顔を見ていたら、もう怒りは雲散霧消、あとかたもなく消え去っていたのだった。

  今、Mさん生きて在りまさば、90歳前後のお年だろうか。凛とした素敵なおばさまになっておられるに違いない。 

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あゝ夫婦」カテゴリの記事

コメント

ほんとに良いお話ですね!
しかし、Mさんは最後にパッピーエンドでホットしたけど、
それにしても、ろくろく探したり、消息を聞いたりしないで、さっさと結婚した元の彼、、、許せないな~

投稿: ナベショー | 2006年8月19日 (土) 23時15分


ナベショーさま

ほんとに許せませんよね。ただ戦後の混乱状況というのが私たちにはわかりかねますしね。今でしたら、新潟へ出向いて行って、ああしてこうして、とか考えることでしょうけども、、、。

投稿: なぎさ | 2006年8月19日 (土) 23時30分

おはようございます
たしかに、毎朝 純情きらり 見てるけど、終戦前の空襲、終戦、その後、、未曾有の混乱のなかでは、そのようなこともあったのですね。
それにしても、靖国をはじめ、太平洋戦争、日中戦争を是とするような最近のナショナリズム、極右翼まがいの風潮の高まりは、悲しいことです、、
10年後には、戦中、戦前のような日本に変わってしまうのでは、、と本気で思うようになりました。

投稿: ナベショー | 2006年8月20日 (日) 07時22分

>今、Mさん生きて在りまさば、90歳前後のお年だろうか。凛とした素敵なおばさまになっておられるに違いない。 

人柄が偲ばれますね^^
年をとっても素敵な方は、
素晴らしい人生を送っておられますね。

投稿: つばき | 2006年8月20日 (日) 10時25分

ナベショーさま

ただでさへ理不尽な世の中なのに、戦争というもっとも理不尽なものでカクランされたくないなー、と思ってしまいます。

投稿: なぎさ | 2006年8月20日 (日) 11時52分

つばき様

他人事ではなく、頭も体も心も鍛えて、生涯現役のキモチで残りの人生に立ち向かおう、と頭では思っておりまするよ(^^♪

投稿: なぎさ | 2006年8月20日 (日) 11時57分

Mさんと年代の近い方たちは、何かしらの(戦争による)痛みや哀しみを抱えていらしようですね。
精神的に脆さがあると言われている私は、足元にも及ばない生き方をしてきた方ばかり。

投稿: ばら色婆ァバ | 2006年8月20日 (日) 13時06分

ばーば様

ばーば様のブログの記事を拝見するかぎり、ばーば様はとても強い精神力の持ち主だと思われるのですけれどもねー(^_^)

投稿: なぎさ | 2006年8月20日 (日) 19時07分

人間何が幸せかは 分からないし、意外と、自分の思いとは、違うところに、あるから面白いね。大切なのは自分自身だよね。少なくとも 僕には畑を耕す、幸せそうな、姿を、想像できます


投稿: 石鯛君 | 2006年8月21日 (月) 12時17分

石鯛君さま

ずーっと胸の中にあったMさんのこと、ブログを通して発表できたこと、嬉しく思っています。ご主人はとても温厚そうな人でしたから、一緒に田や畑の仕事をして、Mさんの心も少しずつ癒されていったのではないかと思っています。よかった、よかった、、、。

投稿: なぎさ | 2006年8月21日 (月) 12時37分

反響ある投稿私だけでなくブログ開いてられることを痛感しました。わたしも皆さんのようにスーット心開いてみたい。

投稿: | 2006年8月21日 (月) 19時14分

反響ある投稿私だけでなくブログ開いてられることを痛感しました。わたしも皆さんのようにスーット心開いてみたい。

投稿: | 2006年8月21日 (月) 19時25分

?さま

どーぞ、どーぞ。引きこもらないでスーッと心開いてくださいませ。
ご自分でも文章を書かれたらいかがでしょう?わたくし、毎日でも訪問させて頂きますよ(^^)v

投稿: なぎさ | 2006年8月21日 (月) 20時41分

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